ゴルフ会員権の贈与時の手数料控除が認められます
ゴルフ会員権を贈与により取得し資産売却時の確定申告の際、『ゴルフ会員権の贈与時にかかった手数料の控除を認めない』とした第1、2審判決を不服とし、 最高裁へ持ち込まれた裁判にて『ゴルフ会員権の贈与時にかかった手数料の控除を認める』という第1、2審判決を覆す逆転判決(平成17年2月1日最高裁)が下されました。
過去5年の確定申告まで更正できます
贈与・相続されたゴルフ会員権や不動産などのその取得の際にかかった手数料が資産売却時に取得費として認められることとなりました。
これにより、国税庁でも『こうしたケースについては、更正の請求や嘆願書の提出があった場合に対応していく』と課税実務の見直しを図らなくてはならないこととなりました。
過去5年以内に”ゴルフ会員権の贈与・相続した資産を売却”された方は、取得費が適正に計上されているか確認されてください。
この判決により、確定申告の更正(訂正)が過去5年(平成11年度の確定申告)までさかのぼり可能となりますので嘆願書を税務署に提出して所得税の還付を受けてください。
訴訟への経緯
この訴訟は、弊社顧問税理士の右山秀一氏(申立人、税理士法人右山事務所)とその補佐人である右山昌一郎氏(税理士・日本税務会計学会顧問)が起こした裁判です。
ことの起こりは、右山秀一氏が父(右山昌一郎氏)から譲り受けた(生前贈与)ゴルフ会員権を売却したので譲渡申告を行いました。
譲渡申告の際に譲り受けた(生前贈与)際の名義書換料を取得費用として控除したが『受贈者が無償で譲受けた資産(ゴルフ会員権)に係わるその後の費用は取得費にならない』として税務署から更正手続の通達がありました。
これに対して不服申立を行うが棄却され、平成12年に税務訴訟として裁判所に移行されました。
第1、2審とも所得税法60条1項※による理由で棄却の判決を受けたが、 右山昌一郎氏は所得税法33条3項※や所得税法38条1項※から 『受贈者の名義書換料を取得費とすることが正しい』と最高裁に上告することとなりました。
- 所得税法60条1項
- その者が引き続きこれを所有していたものとみなす
- 所得税法33条3項
- 総収入金額から資産の取得費および譲渡に要した費用を控除する
- 所得税法38条1項
- 資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額ならびに設備費および改良費の合計額
ちなみに、税務署からの賦課額は45万3千円、弁護士費用はその数倍、勝訴して賦課額の45万3千円は支払わなくとも、その何倍もの弁護士費用が必要となる状況でした。
しかし、”肥後もっこす※”は『国税当局の取り扱いが間違っている』として最高裁への上告となったそうです。
- ※肥後もっこす
- 九州熊本県の方言、「意地っ張り・頑固者・つむじ曲がり」の意味。しかし、女性に対しては使用せず男性に対して使用する、また腹黒い嫌な男には使用しない。 一度決めたら(良いこと・正しいこと)てこでも動かない頑固な男性を指す。もちろん、右山昌一郎氏は熊本県生まれ。
最高裁での口頭弁論にて、原告側は『所得税法60条1項を更正処分の理由とするだけで、譲渡所得の本質に触れている所得税法33条や同38条を除外しており、 譲渡所得課税の趣旨に従えば、当然に名義書換料は取得費として控除すべきものを、贈与や相続によって取得した場合に限って控除しないという解釈をとるのか、実質的な理由がまったく示されていない』と主張し、 裁判官全員一致で原告側の請求を認めて国税当局の更正処分を取り消し、逆転勝訴が確定となりました。
これまで認められなかったゴルフ会員権の贈与・相続時の取得費が認められることとなり、国税当局は贈与・相続時における課税実務の見直しを迫られることとなりました。